【くらべて観よう】
ファンタン・ラトゥール 《ばらの籠》と
ポール・ゴーギャン 《花瓶の花》
ロンドン・ナショナル・ギャラリー展(@国立国際美術館)の出品作から、
1890年代に制作されたファンタン・ラトゥール 《ばらの籠》(1890年)【左図】と
ゴーギャン 《花瓶の花》(1896年)【右図】の比較。
2点の作品には、種類は違うが、いずれも白い花が描かれている。
この部分を比べると、まずファンタン・ラトゥール 《ばらの籠》(1890年)では輪郭線は描かれず、細かなタッチで形状・色調・明暗の微妙な変化が描写されている。
これに対しゴーギャン 《花瓶の花》(1896年)では、ニュアンスの自然な再現にこだわらず、青い輪郭線が花の外形を明確に定義されている。
同じ19世紀末のフランスの画家が描いたこれも同じ白い花だが、
二人の画家が制作した作品のそれぞれで用いられた描法は大きく異なる。
多様な選択肢の中から表現方法を選び取り描くことが可能になっていた、
世紀末の芸術家たちの表現をめぐる状況が如実に示されている。
静物画についても、幅広い様式的選択肢の中から、
それぞれの造形作家の思想・立ち位置・顧客の趣味を考慮しながら、
より適当と考えられるスタイルが選ばれた。
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