【印象派の人物画】ルノワール《雨傘》1881-86年、キャンヴァスに油彩、180 x 115 cm、ロンドン・ナショナル・ギャラリー

ルノワール《雨傘》1881-86年、
キャンヴァスに油彩、180 x 115 cm、
ロンドン・ナショナル・ギャラリー

この投稿ではルノワールが1881-86年に描いた《雨傘》についてご紹介します。

傘をささない無帽の女性は…


 良家の令嬢にはあらず
  • 画面左の方を歩いていく女性は、黄色い籠を手に、帽子をかぶらないで、傘もささず歩いていきます。
  • 当時の常識からして、このようなふるまいは決して身持ちの良い女性のすることではありませんでした。


 女性に近寄る男性
  • この女性の様子を目ざとく見つけて、さっそく黒手袋、黒帽子のひげの男性が、傘を手に近づいてきます。「傘に入れて差し上げましょう」とでも言っているのでしょうか。
  • 無帽で傘も差さずにやってきたのは、きっとこういった手合いをおびき寄せるためだったのでしょう。
  • ただし女性は男性には視線を向けず、その目はわたしたち絵を見る人間へと向かっています。実は、真に誘われているのは、我々鑑賞者なのかもしれません。

印象派的筆触

 様々なタッチの使用
  • 右側の女性達は細部を省略し、多彩な筆触を用いて印象派的に表現しています。
  • 特に帽子や、花のアクセサリーの形態は大胆なタッチで大まかに表されています。

明瞭なフォルム

 形状とヴォリュームの積極的表現
  • 傘の形はしっかりしており、また画面左の暗色の服の女性は輪郭と立体表現が明確です。
  • タッチも特に肌の部分では目立たず滑らかです。

衣装部分の色遣い
  • 一方で衣服の部分では茶色のタッチが混じり、印象派的手法の名残も認めることができます。

古典主義的表現

【部分図】ラファエロ《ヒワの聖母》1505-06年、
板に油彩、107 cm × 77 cm、ウフィッツィ美術館

 「ラファエロ的」デッサン
  • これは、ルネサンス期イタリアを代表するラファエロ👆ら、古典主義画派の芸術家たちの手法に近い、モチーフの形状をはっきりと描き表す「線」を重視する表現であるといえます。
  • この方法が1880年代から始まり、1884年の《大水浴図》👇などで顕著に表れる、ルノワールの新しいスタイルとなります。


【部分図】ルノワール《大水浴図》1884年、
キャンヴァスに油彩、115 × 170 cm、フィラデルフィア美術館

ルノワール《雨傘》1881-86年、
キャンヴァスに油彩、180 x 115 cm、
ロンドン・ナショナル・ギャラリー

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