2025年大阪で開催の万博の出品作・カラヴァッジョの祭壇画《キリストの埋葬》の解説動画を公開しました!
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- 本作は、暗い闇が覆う背景の前に、照明に照らし出された複数の人物たちが展開するシーンを描写しています。
- この暗い背景が、明るい前景に並ぶ人物たちの存在を、作品の前に立つ鑑賞者にひときわ強く感じさせます。
背景に広がる暗い闇
- 脱力したキリスト の亡骸(なきがら)と、それを運ぶ男性たちに加えて、その背後に身を置く、キリストの死を思い思いの姿勢を取りながら悼む女性たち。
- これらの男女の姿を、本作では、岩の上を舞台としながら、画面に大きく描写しています。
三人の女性=マリアたち
下を向く①聖母(左)と涙を拭う②マグダラのマリア(中央)
腕を上げて天を仰ぐ③クロパの妻マリア(右)
- クロパの妻マリアは、顔に広く照明の光を受けながら、両手を、指を開き、手のひらをこちらに示しながら、上に向けて挙げています。
- 目も天に向けて、古き「初期キリスト教美術」の時代のフレスコ壁画などに認められる「オランス」(=orans. ラテン語「祈る人」の意)を思わせるポーズをとっています。
マグダラのマリア
- クロパの妻マリアの前に立つ女性がマグダラのマリアです。
- こちらはうつむいて、顔を影の中に沈めています。
- そして、右の手に白いハンカチを取って、右の眼に溢れる涙を拭いて、静かに悲しみを表しています。
左から①使徒聖ヨハネとニコデモ
- ふたりの男性人物像が身を屈めつつイエスの亡骸を支えます。
- この二名は赤から橙色の暖色を呈する衣装で身を包んでおり、画面の手前の位置に置いて存在感を放っています。
- そのうち、左の奥に身を置くヨハネは師の亡骸に視線を向けており、ニコデモはこちらの、我々絵を見る鑑賞者のいるほうへと顔を向けるように見えます。
男たちに運ばれるイエスの亡骸
- 十字架から降ろされたばかりのイエスは、力なく右の腕を下へと垂らしています。
- その腕の先に注目すると、イエスの右手の指先は、人物たちがその上に身を置く岩の板を指し示しています。
舞台となる岩の板
- 岩の板は聖書に語られる「隅の親石」、キリストを象徴するモチーフと見る意見があります。
- 「隅の親石」は家づくりの工人が不要として捨てるも、建物の土台を築くために役立ったとされる石で、詩編に語られ、新約聖書でも言及されています。
- そして「隅の親石」は、キリスト教美術の文脈では、人々によって邪魔者として十字架にかけられながら、人々の罪を贖ったイエスを象徴するモチーフであると認識されています。
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- さらに、絵の中に表された人物たちは、彼らがその上に立つ岩の板の高さに設定される視点から、見上げるように描かれており、これにより、モニュメンタルな、堂々とした姿で登場しているという印象を与えます。
- 加えて、画面の左の上から差し込む照明が、人物たちを闇の前に明るく照らし出し、存在感を際立たせています。
- この堂々たる姿と、照明の効果とによって本作は、17世紀初めのバロック期の大型作品に特徴的な、迫力のある劇的な画面をよく示しています。
左上から差す照明に照らし出される人物たち
本作は、17世紀のうちからすでに、カラヴァッジョの作品中最高傑作とみなされており、現在でもカラヴァッジョの代表作として認識されています。
そして、いま大阪・関西万博における、ヴァティカン・パヴィリオン(公式サイト)の出品作として重要な役割を担っている本作について、全体の構図から細部の描写まで、詳しく観察しながら解説します。
★同じく2025年の西洋美術関連の展覧会(東京・丸紅ギャラリー)の出品作である、ルネサンス期の画家サンドロ・ボッティチェリが15世紀の後半に描いたテンペラ画《美しきシモネッタ》の解説動画です。こちらの動画もご覧いただければ幸いです。
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