解説!大阪・関西万博出品作⛪カラヴァッジョ《キリストの埋葬》―明暗のコントラストが作り出すドラマチックな画面で迫る大型宗教作品!

2025年大阪で開催の万博の出品作・カラヴァッジョの祭壇画《キリストの埋葬》の解説動画を公開しました!
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現在開催中の大阪・関西 万博(公式サイト)の出品作・カラヴァッジョ の《キリストの埋葬》(ヴァチカン美術館)。17世紀の初め、1602-04年頃に、縦が300㎝、横幅が203cmという巨大な画面に、キャンヴァスに油彩を用いて描かれた、祭壇画として制作された本作について解説します👇


本作は、暗い闇が覆う背景の前に展開するシーンを描写しています。この暗い背景が、明るい前景に並ぶ人物たちの存在を、作品の前に立つ鑑賞者にひときわ強く感じさせます。

背景に広がる暗い闇

キリスト の亡骸(なきがら)と、それを運ぶ男性たちと、キリストの死を悼む女性たちを、岩の上を舞台としながら画面に大きく描写しています。

三人の女性=マリアたち
下を向く①聖母(左)と涙を拭う②マグダラのマリア(中央)
腕を上げて天を仰ぐ③クロパの妻マリア(右)
  • クロパの妻マリアは、顔に広く照明の光を受けながら、両手を、指を開き、手のひらをこちらに示しながら、上に向けて挙げています。
  • 目も天に向けて、古き「初期キリスト教美術」の時代のフレスコ壁画などに認められる「オランス」(=orans. ラテン語「祈る人」の意)を思わせるポーズをとっています。

マグダラのマリア
  • クロパの妻マリアの前に立つ女性がマグダラのマリアです。
  • こちらはうつむいて、顔を影の中に沈めています。
  • そして、右の手に白いハンカチを取って、右の眼に溢れる涙を拭いて、静かに悲しみを表しています。

左から①使徒聖ヨハネとニコデモ
  • ふたりの男性人物像が身を屈めつつイエスの亡骸を支えます。

男たちに運ばれるイエスの亡骸
力なく右の腕を下へと垂らし、右手の指先は人物たちが身を置く岩の板を指し示します。

舞台となる岩の板
  • 岩の板は聖書に語られる「隅の親石」、キリストを象徴するモチーフと見る意見があります。
  • 「隅の親石」は家づくりの工人が不要として捨てるも、建物の土台を築くために役立ったとされる石で、詩編に語られ、新約聖書でも言及されています。
  • そして「隅の親石」は、キリスト教美術の文脈では、人々によって邪魔者として十字架にかけられながら、人々の罪を贖ったイエスを象徴するモチーフであると認識されています。
  • さらに、絵の中に表された人物たちは、彼らがその上に立つ岩の板の高さに設定される視点から、見上げるように描かれており、これにより、モニュメンタルな、堂々とした姿で登場しているという印象を与えます。
  • 加えて、画面の左の上から差し込む照明が、人物たちを闇の前に明るく照らし出し、存在感を際立たせています。
  • この堂々たる姿と、照明の効果とによって本作は、17世紀初めのバロック期の大型作品に特徴的な、迫力のある劇的な画面をよく示しています。

左上から差す照明に照らし出される人物たち

本作は、17世紀のうちからすでに、カラヴァッジョの作品中最高傑作とみなされており、現在でもカラヴァッジョの代表作として認識されています。

大阪・関西万博ヴァティカン館

そして、いま大阪・関西万博における、ヴァティカン・パヴィリオン(公式サイト)の出品作として重要な役割を担っている本作について、全体の構図から細部の描写まで、詳しく観察しながら解説します。


同じく2025年の西洋美術関連の展覧会(東京・丸紅ギャラリー)の出品作である、ルネサンス期の画家サンドロ・ボッティチェリが15世紀の後半に描いたテンペラ画《美しきシモネッタ》の解説動画です。こちらの動画もご覧いただければ幸いです。
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