フィリップス・ワウウェルマン:
17世紀オランダの
馬がいる自然の風景の画家
生涯と画業
フィリップス・ワウウェルマンはオランダ北部の町ハールレム(Google map)で1619年に生まれた(17世紀にこの町で生まれた芸術家としては、他に静物画家ウィレム・クラースゾーン・ヘーダ(作品動画)がいる。)。父パウウェルス・ヨーステンは画家だったが、詳細は知られていない。同様に、フィリップス・ワウウェルマンの修業時代についても知られていない。同郷の肖像画家フランス・ハルスの下で学んだとの報告があるが、様式の相違からハルスの下で修業した可能性は低いと考えられている。他の画家の下での修業には少なからず費用が要るので、節約のために父のもとで絵画芸術の基礎を身に着けたと考えるのが妥当だろう。オランダの画家・伝記作者のアーノルド・ハウブラーケンもこれを支持しているようだが、フランスの伝記作家デザリエ・ダルジャンヴィルは同じく17世紀ハールレム出身の風景画家ヤン・ワイナンツ(1632-1684年)をワウウェルマンの師匠と同定している(D. D'Argenville, Abrégé de la vie des plus fameux peintres, 1745, t. II, p. 84.)。確かに、空が広い自然の景を得意としたワイナンツとワウウェルマンの作風は様式的類似性が高いといえるだろう。
1630年代終わりにはハンブルクに滞在したが、基本的にハールレムを離れることはなかった。1640年にはハールレムの画家同業者組合である聖ルカ組合に所属している。ワウウェルマンが関係した土地売買の記録が残っており、画業以外にも収入を得る手段を確保していたようであることがわかっている。
得意とした主題・モチーフ
ファン・デ・フェルデ父子が海の風景(作品動画)を得意としたのに対し、ワウウェルマンはファン・デ・フェルデ一族と同様に広い空の下に広がる、ただし陸上の自然景を専門とした。画業初期に同じくハールレム(あるいはその周辺)出身と思われる風俗画家ピーテル・ファン・ラールの影響から、人々の日常生活を描いた。その後は独自のスタイルを確立、風俗画・風景画、馬に乗る人物や狩猟・戦闘のシーン、宗教画まで幅広い題材を扱った。この様々な主題の作品を描くにあたって、ワウウェルマンはとりわけ馬の描写を得意とした。そして白から茶色、まだら模様まで様々な毛色の馬が登場し、ある時は静かにたたずみ、あるときはダイナミックに飛び跳ね躍動する風景画を描いた。
Ph. ワウウェルマン《狩場への出発》 (1663-1665年頃、73 x 86 cm、ルーヴル美術館) |
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