【作品解説】クロード・ロラン《ハガルと天使がいる風景》 1646年―大風景の中の宗教人物モチーフ

クロード・ロラン《ハガルと天使がいる風景》1646年
(画面下段部分図)


【作品解説】
クロード・ロラン
《ハガルと天使がいる風景》
 1646年
大風景の中の宗教人物モチーフ


クロード・ロラン《ハガルと天使がいる風景》
1646年、キャンヴァスに油彩、52.2 x 42.3 cm、
ロンドン・ナショナル・ギャラリー

クロード・ロラン
Claude Lorrain
1600年代 -1682年

ハガルの物語@『旧約聖書』
  • クロード・ロランは画業成功期に、ハガルの物語を主題とする複数の作例を描きました。
  • 「創世記」(21:15–19)によると、エジプトの僕の女の子であるハガルがアブラハムにより身籠り子を産みました。しかし彼女は子供に恵まれなかった妻のサラと喧嘩し、逃げます。
  • 画中ではハガルの苦しみと絶望の瞬間が描かれています。荒野では水を得られず、ハガルは息子イシュマエルを茂みに置き、神の救いを祈ります。


天使登場のシーン
  • 天使は遠くの町を指して、ハガルにサラとアブラハムの許に戻るよう勧める一方、ハガルを指さし、イシュマエルが偉大な指導者になるという神の約束を伝えています。
  • 聖書では、ハガルと天使のシーンは砂漠を舞台に設定しています。
  • しかし画家は緑豊かな風景に描いています。
  • 聖書では天使がハガルのもとに出現し水を与えますが、クロードは背景に川を示しています。


天使登場のシーン
  • 天使の服は当初黄色に塗られていましが、今では下の青い下塗りが見えます。
  • 天使の翼も鮮やかさを失っています。
  • ハガルの物語は、17世紀のオランダの芸術、特にレンブラントとその一派例えば弟子のカレル・ファブリティウス―によって頻繁に描かれました。
  • クロードの絵と異なり、レンブラントたちの作品では、風景は重要な要素ではなく、ハガルと天使の姿は通常、接近した姿で示されています。

カレル・ファブリティウス
《ハガルと天使》1645年頃、
キャンヴァスに油彩、157.5 x 136 cm、
ライデン・コレクション

風景表現の重要性
  • クロードの絵画では、風景が構図の最も重要な要素で、距離を表す遠景の建物が描かれています。
  • かすむ日光を浴びるこの静かな光景は、画家が人生のほとんどの時期を過ごしたローマ郊外の田園地帯です。
  • クロードが編んだ『自由の書』は、この絵の制作後に描かれた素描集ですが、この風景は水平方向に長い形式で描かれ、舟は描かれず、橋にはアーチが追加されています。


コンスタブルによる評価
  • 英国の風景画家ジョン・コンスタブルは、彼のパトロンであるジョージ・ボーモント卿のコレクションにこの絵があったときに目にし、賞賛しています。 


コンスタブル《デダム・ヴェイル》1802年、
キャンヴァスに油彩、43.5 x 34.4 cm、
ロンドン、ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館

コンスタブルによる評価
  • 1802年に描かれたコンスタブルの《デダム・ヴェイル》(ロンドン、ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館)の作品は、垂直方向に長いフォーマットと前景を囲む木の使用に関し影響を受けています。
  • ジョージ・ボーモントはクロード・ロランの絵を愛好するあまり、どこへ行くにも携帯したといいます。
  • 1826年に彼のコレクションをナショナルギャラリーに渡したときにも、死ぬまでこの絵を手元に置けるよう条件を付けました。

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