【作品解説】伝統的風景画風の実景描写:コンスタブル《デダム・ヴェイル》1802年

コンスタブル《デダム・ヴェイル》1802年
(画面中段部分図)


【作品解説】
ジョン・コンスタブル
《デダム・ヴェイル》1802年
伝統的風景画風の実景描写


ジョン・コンスタブル
《デダム・ヴェイル》1802年、
キャンヴァスに油彩、43.5 x 34.4 cm、
ロンドン、ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館


● 実景をもとにした習作
  • 19世紀前半のイギリスを代表する風景画家コンスタブルが、 1802年に小型のキャンヴァス(43.5 x 34.4 cm)に描いた油彩習作です。
  • デダム・ヴェイルの土地で見ることができた実際の風景をもとに、しかし伝統的風景画の構図に基づきつつ描かれています。


● 白い雲と枝の葉を表すタッチ
  • 画面上方では青空に浮かぶ白い雲を厚塗りで表しています。
  • それに対し、背の高い木の枝に茂る葉は、分割されたタッチで描かれています。

遠景に描かれたモチーフ


● 遠景モチーフ①:渓谷
  • 遠景には、両川岸に木が並び立つ小さな渓谷が描いています。


● 遠景モチーフ②:教会の塔
  • 画面奥にはそびえたつ教会の塔が見えます。


● 遠景モチーフ③:川と牧草地
  • 曲がりくねる川のほとりには、牛がいる牧草地が認められます。


● 遠景モチーフ④:湖と船
  • 遠くは帆を張る一艘の船が浮かぶ湖が見える。。

モデルとなった作品

● 遠景モチーフ④:湖と船


クロード・ロラン《ハガルと天使》1646年
ロンドン・ナショナル・ギャラリー

聖書の登場人物モチーフ


● ハガルと天使
  • ロランのこの絵には、旧約聖書主題のシーンを描き、ハガルと天使という宗教的人物像2名が登場します。

植物モチーフ


● 宗教人物像の省略
  • ただしロランの絵をモデルに描いたコンスタブルの習作では、画面左下の宗教的人物像は省略されています。
  • そこには緑の茂みだけが描かれています。


● クロード・ロランに対する評価
  • ただしコンスタブルはクロード・ロランを高く評価し、「この世界が知ることがなかった最も完璧な画家」(the most perfect landscape painter the world ever saw)と絶賛しています。
  • このロランに対する評価はターナーのものとほぼ同質で、19世紀イギリスは風景画家の共通認識であるといえます。

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