【作品解説】《青磁琮形花入》(南宋、東京国立博物館)と玉器「琮」

《青磁琮形花入》(東京国立博物館)上端部分図
器の胴体部分の形は変化に富んでいますが、口はシンプルな円形を描いています。
「ColBase」収録 (https://jpsearch.go.jp/item/cobas-147808) 写真をトリミング


【作品解説】

《青磁琮形花入》と

玉器「琮」



《青磁琮形花入》
南宋官窯・12-13世紀
高:19.7 cm、口径:8.2 cm、高台径:12.7 cm

刻銘:「忠厚初」
広田松繁氏寄贈
東京国立博物館
「ColBase」収録
(https://jpsearch.go.jp/item/cobas-147808)

南宋の首都=現在の杭州の宮廷御用品を焼く官窯製青磁花入です。
円筒形に直方体を組み合わせた形状が特徴です。
方形が大地を、穴の円形が天を表しているともいわれます。
占いで使う算木に似るため「算木手」と日本で呼ばれた器種です。


玉器「琮」との造形的関係性
この形状は中国古代の玉器「琮」に倣っています。
南宋官窯は古代玉器形を模した青磁を量産しました。

》良渚文化(長江文明、紀元前3500年-前2200年頃)


》中国、新石器時代
"Neolithic jade cong" by Gary Lee Todd, Ph.D. is marked with CC0 1.0

《十節玉琮》
成都、金沙遺址博物館
写真:Wikimediaより
長大・硬質の玉を加工。
上下から円孔を穿(うが)っています。
東京国立博物館の《青磁花入》より丈が高くなっています。



玉器「琮」

中国新石器時代後期-殷・周期に製造された玉器です。
方柱形、長軸方向に円形孔を穿つ形をしています。
狭長・寸胴等形状はさまざまです。また表面に線画・抽象画を施します。
起源は腕輪とされています。供犠や葬儀の祭祀や儀礼に使用されたと考えられます。


黒が強い灰色土に濃色釉薬を厚くかけています。
やきもの本体の粘土と釉は収縮率が異なります。
そのため貫入のひび割れが一面に生じています。
モデルとした玉器には認められない、磁器ならではの造形的特徴です。


江戸時代初めから昭和の初めまで尾張徳川家に伝わった名品です。
花入れ或いは水指として使用されました。
尾張家台帳には水指として使用されたとする記録が残っています。

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