【17世紀オランダ風俗画】暴れる農民の男女:ファン・オスターデ 《喧嘩》1637年、エルミタージュ美術館

アドリアーン・ファン・オスターデ
《喧嘩》1637年、板に油彩、
25 x 34 cm、エルミタージュ美術館

この投稿では17世紀オランダの風俗画家アドリアーン・ファン・オスターデが1637年に制作した《喧嘩》について解説します。

室内の刃傷沙汰

● 農民の大喧嘩
  • 描かれているのは、農家の暗い室内の様子です。
  • そこで複数の男女による暴力沙汰が繰り広げられています。

壺vsナイフ二刀流


 タイトル付き枠
  • 黄色の服の男は壺を振り上げています。
  • これに立ち向かう青い服の男は、ナイフ二刀流で応戦しています。

止める女、暴れる女

 対照的な二女性のふるまい
  • ピンクの服の女は抱きついてナイフ二刀流の男を止めています。
  • これに対し別の女は棒を振り上げて喧嘩に加勢しています。

「お手上げ」の男

 もう、どうしようもない
  • 収拾のつかない暴力行為が連鎖しています。
  • これには奥の男も文字通り「お手上げ」です。

反「ミレー的」表現

【部分】ミレー《晩鐘》1857-59年、オルセー美術館

 身だしなみなど気にしない
  • 同じ農民でも19世紀のミレーの静かに祈る人々とは大違いの登場人物達です。
  • オスターデ《喧嘩》の農民は髪はボサボサで目まで覆っています。

農民の非「理想化」表現

● 「古典美」の対極にある造形
  • 大口を開けた男女の顔の造形は曖昧で、奥の男性は5頭身程度です。
  • 古典的美の理想から離れた身体表現であるといえるでしょう。

醜さと狂暴性

● ナイフと農民
  • 一方で青い服の男性が手にするナイフの形状は明確です。
  • この絵に認められるのは、当時の都市民が農民に対して抱いていたであろう「醜く凶暴」というイメージが反映される表現です。

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