この投稿では、19世紀フランスの印象派の画家・カミーユ・ピサロが、彼の画業前期の1864年に描いた《マルヌ河の岸辺》(グラスゴー市立美術館)についてご紹介します。
この投稿では、19世紀フランスの印象派の画家・カミーユ・ピサロが、彼の画業前期の1864年に描いた《マルヌ河の岸辺》(グラスゴー市立美術館)についてご紹介します。
ピサロ《マルヌ河の岸辺》1864年
- パリ東部から南東部を流れるマルヌ川の岸辺を描いたとされる風景画です。
- 画面の上半分を雲の浮かぶ空、下半分を地面が占めています。その地面から空に向けて、画面の左右で木々が飛び出ています。
- 緑の地面を両脇に従えつつ、茶色の道が手前から画面奥へと続きます。
- 道と並んで流れる川の白く輝く面(おもて)が、画面の右に描かれています。
- パリ東部から南東部を流れるマルヌ川の岸辺を描いたとされる風景画です。
- 画面の上半分を雲の浮かぶ空、下半分を地面が占めています。その地面から空に向けて、画面の左右で木々が飛び出ています。
- 緑の地面を両脇に従えつつ、茶色の道が手前から画面奥へと続きます。
- 道と並んで流れる川の白く輝く面(おもて)が、画面の右に描かれています。
1. 低い土地の風景
画面中央やや上の地平線と空。
広い空の下に、平たい緑色の大地がどこまでも画面奥へと続いています。
高い山などが見えない、平地が続くフランスの川辺の景色です。
起伏が乏しい風景に、変化を加える工夫が凝らされています。
- 平地が多い国では、低い地平線の上に大きな空が広がる景色が描かれます。
- しかし平坦な土地を描く場合、工夫がないと変化のない単調な画面ばかり表現する事になってしまいます。
- 解決手段としては、人物や建築モチーフの導入により、景色にアクセントを加えることで、単調さを脱することができます。
- この方法を効果的に用いたのが、17世紀オランダの画家たちです。建築モチーフを有効活用し、平たい土地の続く故国の風景に変化を与えています👇
絵のちょうど真ん中あたりには、奥から手前へとやってくる女性人物像が見えます。
歩いてくる人物は静かな風景に動きをもたらします。
また女性の衣装の赤や青の色は緑と茶色が主調色となる
画面下半分で色彩のアクセントとしても機能しています。
- この女性のような点景人物は、風景モチーフのサイズを規定するスケールとしての役割も果たしています。
- 小さな人間の姿が比較の基準となることで、自然の大きさが際立っています。
- 具体的には、女性像のサイズとすぐに大きさを比べられるモチーフとして、左の木があります。
- 密に葉を茂らせたこの木は、だいぶ背が高いことがわかります。高さは10メートル弱にもなるでしょうか。
画面奥は明るいようですが、前景は木陰の暗がりに描かれています。
一方で、画面左からは一筋の光が差し込んで、道を照らしています。
光の当たる場所と当たらない場所を設ける工夫は、風景に変化をもたらす有効な手段です。
手前から向こうへと、暗い☞明るい☞暗い☞明るいと繰り返すと、画面に奥行きを感じさせることもできます。
4. コローの風景画との類似
コロー《セーヴル、トロワイヨン街道沿いの高い土地》は、ピサロ《マルヌ河の岸辺》よりも30年も前に描かれていますが、構図や人物・風景モチーフの配置がそっくりです。
ピサロはバルビゾン派のコローを訪問したことがあり、展覧会出品の際には「コローの弟子」と自己紹介するほど尊敬していました。
《マルヌ河の岸辺》はコローの風景画を思わせる要素でいっぱいの、いかにも「コローの弟子」らしい作品であるといえるでしょう。
- この作品は「コローの弟子」を名乗るピサロの作として、重要な作品展示の機会だった「サロン」展に出品されました。
- コローは、1855年に万国博覧会でグランプリを受賞し、有名風景画家として活躍していました。
- 当時のパリで風景画を描いて広く認められ成功を収めるには、このコローへのリスペクトにあふれた作品を描くというのが最善手だったことは間違いありません。
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