【浮世絵のファッションと色彩】菱川師宣《見返り美人》(17世紀、東京国立博物館)

菱川師宣《見返り美人》
17世紀、絹本著色
東京国立博物館

この投稿では江戸時代の浮世絵師・菱川師宣が描いた《見返り美人》についてご紹介します。

  • 菱川師宣が17世紀に絹の支持体に鮮やかな色彩で描いた代表作《見返り美人》です。
  • 縦長の画面に、歩みの途中で後方に視線を送る女性が表されています。
  • 人物の動きに関しては、前へ進む動きと、後ろを振り返る動きの均衡がバランスよくとられています。

前髪から下げ髪まで

  • 右肩越しに振り返る頭部は完全な横顔を示しています。
  • 髪には髪を掻き揚げるための笄(こうがい)と櫛を挿しています。
  • 髪は幅広に切ったたけ長の元結、つまり「平元結」で結んでいます。
  • これに対し下げ髪の先は丸く「玉結び」に終えています。

振袖の模様

  • 振袖には朱色地に、菊花の地紋を散らしています。
  • 桜丸紋は白と薄藍色の二色、丸紋が囲う中央紋は金茶色となっています。
  • 金茶色の菊花の丸紋、その囲う中に細かな鹿の子絞りを集めています。

帯の結び方と模様

  • 帯は江戸時代元禄期、17世紀末の流行だった女帯の結び方、一丈二尺の帯を後ろで片結びにした「吉弥結び(きちやむすび)」になっています。
  • 緑色地に濃緑の七宝繋ぎが連続模様としてあしらわれています。
  • この七宝繋ぎの中には、小さな桜花が描かれています。

色の組み合わせ

  • 色彩は着物のと、赤の補色に当たるのコントラストを基礎にしています。
  • その上で残る原色=青色黄色、そしてを文様に用いています。
  • は更に下の方で袖と裾の口にも用いられ、絵の上の方に賦された髪の毛のと対応しています。
  • 菱川師宣《見返り美人》はこのように、流行の衣装と文様を描くだけでなく、色彩のバランスもとれており、輪郭線もしっかり描き起こされ、様々な面で気配りの行き届いた作品となっています。

関連投稿

コメント