【中世の宗教画】ジョット工房《ステファネスキ三連祭壇画》 1330年頃、板にテンペラ、220 x 245cm、ヴァチカン美術館

ジョットとその工房《ステファネスキ三連祭壇画》
1330年頃、板にテンペラ、220 x 245cm、ヴァチカン美術館

この投稿ではイタリアの画家ジョット・ディ・ボンドーネとその工房のスタッフたちが1320年頃に制作した《ステファネスキ三連祭壇画》について解説します。

表面に描かれたモチーフ

 祝福するキリストと聖人たちの最期の場面
  • ジョットは枢機卿ジャコモ・ガエターニ・ステファネスキの依頼で、現在ヴァチカンのサン・ピエトロ大聖堂が建っている場所に、16世紀以前に存在した古い聖堂のために描きました。
  • ベネディクトゥス11世によってローマに呼び寄せたられた時、ジョットはステファネスキ枢機卿と知り合ったと考えられます。
  • 制作にあたっては、工房のスタッフを率いて仕事に当たったといわれています。
  • この祭壇画はサン・ピエトロ聖堂身廊の内陣西部中程に配置され、前と後ろから人の目に触れることが想定されていました。
  • そのため各パネルには、祭壇画の反対側と対応するモチーフが表されています。
  • 中央パネルは、裏面に表された座るペテロと対応するように、天使に囲まれ玉座に着くキリストが描かれています。

ペテロとパウロの殉教シーン

ペテロとパウロの殉教シーンペテロとパウロの殉教シーン
 殉教のシーン
  • 左右のパネルには、反対側に描かれているふたりの聖人の殉教場面が描かれています。
  • 向かって左には逆さ十字にはりつけになる聖ペテロ、向かって右のパネルには首を切り落とされる聖パウロが描かれています。

 プレデッラ
  • 3枚のメインパネルの下の、横長フォーマットの3画面で構成される「プレデッラ」部分には、玉座に着く聖母子と12使徒の姿が表されています。

祝福するキリスト

 正面向き・対称的表現
  • 中世の多くのイコンにみられるように、キリストは完全な正面向きの姿で表されています。
  • 右手は祝福の形をとり、左手に本を携える姿は、中世を通して繰り返し表された玉座のキリスト像が示すものと同様のタイプであるといえます。
  • 背後には、金地を赤や青で彩る植物文様と幾何学的パターンを組み合わせた、連続模様が並び、キリストを荘厳しその重要性を強調しています。

光背のある天使

 キリストを見上げる横顔
  • 頭の周りに光る金の円盤、つまり光背(ニンブス)が金で表現されています。
  • 輝く金地が絵の具で描かれた天使の横顔の輪郭を明確に示す効果を生じています。
  • 光背(ニンブス)の縁に沿って、小さな丸花模様が並んでいます。
  • 金箔の細かな加工が特徴の、中世後期の工芸的な絵画表現が特徴的に認められる部分です。

祭壇画反対側の絵

 作品の形式と注文
  • キリストが描かれた面の裏側の中央のパネルには、サン・ピエトロ聖堂が捧げられている当の聖人=聖ペトロが表されています。

ペテロと聖人たち

 聖人から枢機卿まで
  • 髭を豊かにたくわえたペテロは、巨大な黄金の鍵を左手に持っています。これはキリストにより託されたとされる、天国の門の鍵です。
  • そして右手は祝福を与える形をとりながら、象嵌細工で装飾が施された白い石の座に着いています。
  • ここで聖ペテロは場面の主人公であるため、その重要性を強調するために、正面向きで、光背を付け、最も大きく描かれています。

紫の衣の天使たち

 左右に控える2名の天使
  • モチーフのサイズに関しては、ペテロの次に大きいのは2名の天使です。
  • 天使たちは、紫色の衣をまとい、玉座の左右に立っています。

2名の聖人

 聖ゲオルギウスと…
  • その下に光背を頭の後ろに付けた聖人たちが描かれています。そのうちの一人はこの祭壇画を注文したステファネスキ枢機卿をトップに据えたヴェラブロの教会の守護聖人である
    聖ゲオルギウスです。
  • 右側の人物はかつてのローマ教皇シルウェステル1世、あるいはケレスティヌス1世であると考えられています。

枢機卿とローマ教皇

 騎士聖人と聖職者たち
  • その下の2名は重要性が一番低いモチーフであり、そのため一番下の段に、最も小さなサイズで表されています。
  • 左に跪く人物は、この祭壇画の注文主である枢機卿
    ジャコモ・ガエターニ・ステファネスキです。
  • 右に跪く人物は1294年に7月から12月までにローマ教皇を勤めた、ケレスティヌス5世であるといわれています。

ステファネスキ枢機卿と画中画

 寄進者、画中に登場
  • ペトロを囲む聖人達の中には、白い衣を身に着けたジャコモ・ガエターニ・ステファネスキが完全な横向きで描かれています。
  • 枢機卿は跪(ひざまず)き、《ステファネスキ三連祭壇画》を手に持ちペテロに捧げています。

小さな祭壇画


 画中画としての祭壇画
  • 絵に描かれたステファネスキが持つ祭壇画の額は尖塔を備えたフレームに納められています。そのためサン・ピエトロ大聖堂に設置されていた絵は、現在よりも装飾豊かな枠にはめられ、立派な姿であったと考えられています。

左右のパネルに描かれた聖人

 2x2=4人の聖人
  • 向かって左側のパネルには、ラテン語訳聖書の翻訳者である聖ヒエロニムスと、ペテロと同じく伝道に力を尽くした聖パウロが描かれています。
  • 右側のパネルには、福音書記者ヨハネと、ペテロのきょうだいの使徒=聖アンデレ(あるいは聖マルコとも)が描かれています。

プレデッラ部分に描かれた聖人

 三人の聖人
  • 中央パネル下のプレデッラには、3人の聖人が横一列に並んで半身像で表されています。
  • ここには石打刑で殉教したことで有名な聖ステファノと、その他2聖人が表されています。

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