【1分でメトロポリタン展⑩】ディーリック・バウツ《聖母子》(1455-60年頃 メトロポリタン美術館)

ディーリック・バウツ《聖母子》

15世紀・北方ルネサンスの宗教画

  • 東京の国立新美術館で開催のメトロポリタン美術館展の出品作の解説動画。
  • 第10回は、15世紀北方画派の芸術家、ディーリック・バウツが1455年から1460年頃に制作した、メトロポリタン美術館が所蔵する《聖母子》を取り上げました。
《幼子キリストに口づけする聖母》
(15世紀前半 ルーヴル美術館)
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本作は、15世紀まで伝えられる、伝統の聖画像(イコン)に描かれた、
母マリアに口づけする幼子イエスの図像を踏まえています。
しかしながら、表現は母と子の親密な関係を感じさせ、
また肉体の形状・細部を自然な表現で示す傾向が顕著です👇

髪の毛の生え際と、つやが、
細い線やこまかい点を打つタッチで表現されています。
北方画派の細密画法が十二分に用いられています。

マリアの暗い茶色の毛が束になって流れ降りる部分では、
ハイライトの並行する細く白い線を有効利用して、
髪の毛の流れる方向、毛並みが示唆されています。

母マリアの豊かな髪と対照的な、
幼子イエスのまばらに生えるブロンドの毛。
人間の頭の髪の毛という、同じタイプのモチーフでも、
人物ごとに描き分けがはっきりとなされています。

母マリアと口づけを交わす幼子イエス。
母と子の愛情あふれる交流が描かれています。

幼子イエスのかわいらしい手。
赤子らしい、短い指と、丸い手の特徴をよく描いています。

大人の男性の発達した筋肉のついた腕とは異なる、
子供の腕の、筋肉が未発達で、柔らかい感触が、
ひじの内側にできるしわの表現で示されています。

こどものぽっこりと前に突き出た丸いおなかも、
自然主義的に表現されています。
横に長いおへそのような細部も忘れず示されています。

幼子のお尻を優しく包む母の手。
指には関節のあたりにできるしわと、
指先の爪といったディティールもしっかり描かれています。

このように本作は、伝統の聖画像のスタイルを踏まえつつ、
母と子の愛情を強調した宗教作品となっています。

バウツの時代の絵画の歴史についてはコチラの記事もご覧ください

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