この投稿ではニューヨークのメトロポリタン美術館が所蔵する、鳥のかたちをした中世のブローチについてご紹介します。
この投稿ではニューヨークのメトロポリタン美術館が所蔵する、鳥のかたちをした中世のブローチについてご紹介します。
《鳥の形のブローチ》 6世紀前半、フランク王国 銀に鍍金、金箔、ガーネット 赤色ガラス、各高さ:3 cm |
はじめに
このアクセサリーはどこで、いつ作られたのですか?
フランク王国ができてすぐの6世紀に、金属工芸・
宝石細工・ガラス細工に通じた職人が作りました。
|
誰が身に着けたもの?
このブローチはどのように使われていたのですか?
中世ヨーロッパに生きた女性の衣装を留めるための、
実用的なアクセサリーとして身に着けられていました。
- 鳥のかたちのブローチはいずれも婦人の墳墓から発見されています。
- 二つセットで女性が身に着けていたのでしょう。
このブローチは何をかたどっていますか?
横向きの鳥を表しています。体のそれぞれの部分の
サイズは大きく誇張され、かたちは単純化されています。
複数の素材と技法の併用
- 本体部分は、銀に鍍金(ときん、めっき)を施して作られています。
- この本体には、部分的に、模様を描いた金箔が貼られています。
- その上に、柘榴(ざくろ)色のガーネット、あるいは赤い色ガラスが、象嵌(一つの素材に別素材をはめ込む技法)されています。
- 赤色透明パーツは、鳥の体の各部分を表しています。
2. 顔いっぱいに広がるまん丸の目
3. 紡錘形をかたどる胴体
4. 台形のかたちをした末広がりの尾羽(おばね)
- 鳥の全身をかたどっていますが、翼と脚の部分は表されてないようです。
「クロワゾネ」・タイプ
このブローチでは、金属素材と
ガラスが組み合わせられています。
金属でフレームを作り、そこに色ガラスを埋め込む
テクニックは「クロワゾネ」と呼ばれる技法です。
- この「クロワゾネ」・タイプの作品は、比較的古い、紀元後400-600年頃に制作されたと考えられています。
- 鳥のモチーフの選択と、金地の上にガーネットと赤い色ガラスを載せる技術は、400年頃に南ロシアで、450年頃にドナウ川の流域でも広く知られていました。
- また500-550年頃にはライン川の中流域とフランス北東部でも確認されました。
技術はどう伝わった?
- 鳥のモチーフを表すために、金の上にガーネットを載せて付ける技術が、中世には西ヨーロッパで認められるようになりました。
- この現象については、黒海沿岸に住んでいたゲルマン民族の一部族であるゴート族が、西へ移動し、テクニックを伝えたことが原因であるといわれています。
- もう一つの説は、フランク王宮が南ロシア出身のゴート族の職人を雇って作らせたというものです。
- これらの説はいずれもが正しい、つまり、ゴート族が西へ移ってくると、彼らの職人をフランク王宮で雇って作品を作らせていた可能性も考えられます。
ニューヨークのメトロポリタン美術館は、同じくゴート族の工芸テクニックの影響を受けた素材と技法で作られた、円い形のブローチも所蔵しています。
- 鳥の形をしたブローチも高さ3㎝と小さなサイズでしたが、この円形のブローチも直径は2.9㎝と小型です。
- こちらは金鍍金(きんめっき)を施さない銀色のフレームに、赤い透明素材が用いられています。それに加えて、緑色のパーツも確認できます。
- 小さく区切られた部分に、ガーネットや色ガラスのような、色付き透明素材パーツを接着しています。
- このパーツの下には、模様のついた金箔が配置されています。
- 透明素材の下に透けて見ることができるこの金箔の模様は、金属やガラスの素材でできたブローチの外観に変化を与え、装飾的な効果を上げています。
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