【作品解説】「天命釜(てんみょうがま)」:《筋釜》室町時代・16世紀、鋳製、東京国立博物館

《筋釜》室町時代・16世紀、鋳製
高:17 cm 口径:13.6 cm 胴径:24.3 cm 
東京国立博物館
「ColBase」収録 (https://jpsearch.go.jp/item/cobas-71242)

《筋釜》
天命(てんみょう)
室町時代・16世紀

「天明釜」とは何か?

こちらは16世紀の茶湯釜です。室町時代の作で、いわゆる「古天明」と呼ばれる種類の窯になります。下野国佐野庄天命(栃木県佐野市犬伏町)で鋳造されたために、「天明」の名前で知られています。天明釜は重厚な印象が都人に好まれました。江戸初期まで茶の湯釜としてよく使われ、千利休も愛用したとされています。


見どころ①:寸法と姿かたち

こちらの窯、高さ17 cmと丈は低くなっています。これに対し胴径は24.3 cmあります。そのため、こちらの窯はどちらかといえば平たい姿を見せています。


見どころ②:口の形

 

東京国立博物館所蔵のこの窯は、口は丸い「輪口」の小振りな釜となっています。
丸く平たい蓋には、小さなつまみがついています。



見どころ③:「筋釜」



《筋釜》の名は本体に付けられた筋状部分に由来します
肩下から胴の部分にかけて、四本の段をもつ筋を鋳出しています。


見どころ④:左右の「鐶付」


筋下に小さな「鐶付」が見えます。鐶付とは、茶釜の、鐶を通す左右一対の「耳」部分をいいます。意匠に富み、鬼面・遠山・松笠・茄子の形に作る場合もあります。釜を動かすときに鐶をかけて通しました。鐶が取りつけてあるものもあります。



見どころ⑤:「地」の様子


地の部分では、荒くごつごつした荒肌を示しています。
このような粗い肌の様子が、他のやきものの道具に特有の、同じくざらざらした、あるいは釉が懸って滑らかな表面の様子と、時に対応し、時にコントラストをなしながら、お茶の席に視覚的・造形的な変化をもたらしていたのではないでしょうか。



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