【作品解説】《鉄風炉》安土桃山時代、文禄2年(1593年) 東京国立博物館

《鉄風炉》安土桃山時代、文禄2年(1593年) 東京国立博物館
「ColBase」収録 (https://jpsearch.go.jp/item/cobas-74555)

この投稿では、16世紀末の安土桃山時代に制作された、
東京国立博物館所蔵の《鉄風呂》について解説します。

現代人が入浴に用いる「風呂」とは違うようですが、
この「風呂」は、どのように使うものでしょうか?

この鉄製の「風炉」は湯を沸かすのに使います。
中に熱い炭を入れ、上に茶釜を載せて熱します。


鉄風呂の前側の面には、曲線で囲まれた窓が見えます👆
この窓は、どんな役割を果たしているのでしょうか?

この窓は火を入れるための火口として機能します。
反対の背面には円形の風口が設けられています。


格狭間(こうざま)

  • この曲線で囲まれた三つの山を上辺に持つ窓の形を、格狭間香狭間香様こうざま)と呼びます(牙象(げじょう)・眼象(げんじょう)とも呼びます。)
  • 「こうざま」は、壇羽目・台・露盤側面に彫込む刳形装飾です。台脚を固定するための連結材が装飾化したものであると考えられています。
  • 中国の漢の時代に、台の水平材を支える垂直材の上下をひろげ補強する刳形(モールディング)をいれた部分が、かたちの起源とされる部分です。

風呂の口が立ちあがる箇所に、
植物文様が彫り抜かれています👆

これは「梅唐草文」を「透かし彫り」した装飾部分です。
「梅唐草」は梅の花と蔦(つた)を組み合わせています。

銘(めい)

  • 胴には「文禄弐年癸巳衡梅禅院」の鋳出銘(陽鋳銘)が刻まれています。
  • この銘のおかげで制作年が文禄2年(1593年)とわかりました。
  • 衡梅院(こうばいいん)は京都にある臨済宗妙心寺派大本山・妙心寺塔頭(本寺の境内に建てられた小寺・脇寺)です。
  • この塔頭で《鉄風呂》は什物(じゅうもつ:日常使う道具)として用いられていたと考えられています。
  • そして衡梅院(こうばいいん)で用いられたために、梅唐草透かし彫りが施されているのでしょう。
  • 妙心寺のゆかりのひとびとがお茶を飲むとき、茶釜でお湯を沸かすために、この風呂を使っていたのでしょう。


関連作品

コメント