【アステカ美術】《ケツァルコアトルのモザイク仮面》後古典期、1325-1521年、木、トルコ石、貝、高さ:16.5cm、ロンドン、大英博物館

《ケツァルコアトルのモザイク仮面》

《ケツァルコアトルのモザイク仮面》
後古典期、アステカ文化、1325-1521年、
木、トルコ石、貝、
高さ:16.5cm、ロンドン、大英博物館

アステカ神話の神「ケツァルコアトル」の頭部をかたどった、14-16世紀頃制作された仮面についてご紹介します。

トルコ石のモザイク


  • このマスクを制作するには、まず木の仮面を作ったようです。
  • 次にその木の仮面の表面をトルコ石の小さな欠片を樹脂の糊でモザイク状に覆っています。
  • トルコ石が呈す青色は水の色です。そのため雨の神トラロックやチャルチウトリクェの色でした。
  • また空の色であるとするなら、太陽神トナティウ、ウィツイロポチトリの象徴的な色でした。

アステカ文明では、トルコ石のモザイクによって
猿の頭部も作っています(15世紀頃、大英博物館)。

顔のパーツの表現

  • トルコ石でできたモザイクのかけらは、目の回り、鼻、丸い頬、口の周りに整然と並べられています。

突出部の表現


  • 目の周りや頬の飛び出た部分は細かなトルコ石のピースをアーチを描くように貼っています。
  • これにより穏やかにカーヴする曲面が表現されています。

鼻の表現


  • これに対し鼻は、鼻梁を四角いトルコ石を整然と縦に並べ、と追った花筋を表現しています。
  • 一般にアステカ人は非自然主義的な造形を好みましたが、このマスクは自然主義的傾向を示す造形を示しています。

目の表現


  • 白い部分、つまり目と歯は貝殻で作られています。
  • 目は両端が尖った楕円形をとる貝殻を張り付けて表しています。
  • 目の真ん中には穴をあけ、黒めの部分を表現しています。

歯の表現


  • 歯の部分は7枚の貝殻で、上顎の歯だけを表し、下顎の歯は表現していません。
  • 歯の部分では、中央の歯だけが大きく表される、非自然主義的な表現が採用されています。

ミシュテカ人

"2013-13-27 Máscara funeraria mixteca Tumba No. 7
Monte Alban Museo de las Culturas de Oaxaca anagoria
"
Created by Anagoria (licenced under CC 表示 3.0)
メキシコ、オアハカ州のモンテ・アルバン7号墓で
発見された仮面(1300年 - 1350年頃)

  • モザイク細工はメキシコの
    南の方に住んでいたミシュテカ人が得意としました。
  • そのためミシュテカ人を呼び寄せて作らせた可能性が想定されています。
  • あるいはミシュテカ人から受取った貢ぎ物の品だったのかもしれません。

Aztec/Mixtec Turquoise Mosaic Mask of God Quetzalcoatl, c. 15th Century
トルコ石のモザイクで作ったアステカ/ミシュテカの
ケツァルコアトルの仮面(15世紀頃、大英博物館)。

関連作品:テオティワカンのマスク

  • メキシコ中部に存在したテオティワカン文明でもモザイク細工の仮面を作りました。
  • トルコ石だけでなく、貝殻🐚をメインの素材として用いるマスクも制作しています。

テオティワカン文化の影響が認められる
トルコ石のマスク(ゲレーロ州)。
上唇から頬へと伸びる四角い渦巻き文様が特徴的。

Shell Mosaic Ritual Mask, 300-600 AD, Teotihuacan, Mexico, stone and spondylus shell with stucco - Art Institute of Chicago
メキシコ・テオティワカン文化圏で作られた
黄色が主調色となる儀式用の仮面(シカゴ美術館)。
紀元後300-600年に、石・貝・漆喰を用いて作られた。

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