動画de西洋美術史入門:第1回「原始美術」―旧石器時代の絵画と彫刻

今回から始まった新しい動画シリーズ、「西洋美術史入門」。その記念すべき第1回の動画では、原始時代の美術を扱います。

前期旧石器時代

礫石器

メルカ・クントゥレ出土石器

  • エチオピアのメルカ クントゥレから出土した、170万年前に作られた、石器時代の初期の作品。
  • 縦・横・厚みがいずれも7センチメートル前後の、小型の本作。
  • 堅いハンマーで打撃を加えて製作された石器文化、オルドワン石器に属する製品です。

アシュール文化期のハンドアックス


画像クレジット

  • 175万年前のエチオピア南部・コンソ遺跡の、丸いかたちの持ち手となるお尻の部分と、尖った先端を持つ手斧(ハンド・アックス)のようなアシュール型石器には、デザインともいえる造形の傾向が認められます。
  • 後期旧石器時代にあたる、紀元前50万年-15万年頃に制作された手斧。
  • 燧石(フリント)製で、長さ115.21mm、重さ292.29gの小型の製品です。

中期旧石器時代

イベリア洞窟壁画

  • 64800年前の中期旧石器時代には、イベリア半島において洞窟壁画が描かれました。
  • モチーフとして、手形、点、線、幾何学模様、動物の群れの様子が選ばれて描かれています。
  • この壁画の存在は、ネアンデルタール人が自然界に存在する具体的なモチーフを描写する能力を有していたことを示しています。

後期旧石器時代

洞窟壁画

オーリニャック期

  • ホモ・サピエンスの時代となる、後期旧石器時代には、43000年前からオーリニャック期が始まります。
  • オーリニャック文化は、フランス、ピレネー地方のオーリニャック遺跡を標準遺跡とする文化の名前です。
  • この文化では、石刃の剥離、分厚い石器、骨製尖頭器の使用が行われました。

石刃(スクレイパー)


《石刃(スクレイパー)》出土:オーリニャック
  • 石刃は、円弧状の葉の部分を持ち、掻き取ったり、削り取ったりする道具。
  • 後期旧石器時代(約3万5000~1万2000年前)にもっともよく発達しました。

マドレーヌ期

洞窟壁画

  • そして、マドレーヌ期には、洞窟壁画が盛んに描かれるようになります。
  • マドレーヌ文化は、ピレネー山脈をはさんでスペインと国境を接する、フランスのドルドーニュ地方にある、マドレーヌ岩陰を標準遺跡とする、後期旧石器時代最後の文化です。
《ラスコー洞窟》
20000年前
  • フランス西南部に位置するドルドーニュ県にあるヴェゼール渓谷にある、モンティニャックの南東の丘の上に位置する洞窟に描かれた壁画。
  • 牛・馬・鹿などの、複数の種類の動物が描かれています。
  • 牛の角は、日本の長さに長短の差があります。これは、手前の角と、奥の角の、遠近の違いを表現した結果であり、原始時代において既にと考えられています。

「原始のヴィーナス」

《ヴィレンドルフのヴィーナス像》
22000-20000年前
  • 《ヴィレンドルフのヴィーナス像》の名で知られる、旧石器時代の人物像。
  • 22000-20000年前に制作された、女性の裸体像です。
  • 現在のオーストリアの、ニーダーエステライヒ州ヴァッハウ渓谷の小村ヴィレンドルフ近くで発見されたため、その村名を冠したタイトルにより知られています。
  • 素材は球状または卵状の粒が構成する石灰岩である「ウーライト」(魚卵状石灰岩)で、 高さは11㎝と小さな石像です。
  • 現在はオーストリアのウィーン自然史博物館に所蔵されています。
  • 現在、本作の3Dモデルが公開され、あらゆる角度から造形を確認することが可能となっています👉ヴィレンドルフのヴィーナスの立体モデルScan the World
  • 楕円球を押しつぶしたような形状を取る胸や、臍も表した腹と、左右に張り出した腰が、胴体部分の特徴です。
  • これらの部分ののサイズは、誇張されて作られており、非自然主義的な造形が明らかです。
  • デフォルメの傾向が強い表現には、出産や、授乳=育児にかかわる身体の部分を強調しようとする意図が感じられます。
  • このような意図を感じ取れる人体表現からは、後の時代の女神・イシュタルやヴィーナスのように、豊穣多産を願う人々によって製作された可能性が想定されます。
  • 《ヴィレンドルフのヴィーナス像》の頭の部分ををみると、まん丸の球体に、紐を数重に上から下へと巻き付けたような形状を示しています。
  • この箇所には、いかなる頭部のパーツも、すなわち、目も、鼻も、口も、耳も表されることがありません。
  • この頭部のディティールの再現的な描写に無関心を貫く表現は、胸や腰のような胴体の特徴的な表現と対をなしているようにも見えます。
  • もしかしたら、この高度にシンプルな省略的頭部表現には、首から下の身体に施した、デフォルメと誇張の傾向が強い、なかんずく胸や腰の描写を、相対的に注目の集まる部分に仕立て、強調するという意図があったのかもしれません。

新石器時代

  • そして次の新石器時代には、トルコ南東部にあるシャンルウルファの丘の上に位置する、ギョベクリ・テペのT字型石柱のような宗教作品や、後期新石器時代のハラフ土器のような彩文土器が造られました。

ギョベクリ・テペの石柱

  • ギョベクリ・テペの石柱👆は、高さが5メートル、重さが10トンにもなる例もあります。
  • これらのモニュメントを作成するためには、まず、硬い石材を切り出し、さらに、思い石を運び出す必要があります。
  • 作業に当たっては、たいへんな労力と、多くの人の手が求められたことは間違いありません。
  • そのような素材・人材を得ることが可能な状況が存在したということは、集中された権力を握る、特権的な階級に属した人間が、新石器時代には人々の上に君臨していたことを想像させます。

ハラフ式彩文土器

  • 対称的な構図で、曲線を用いた幾何学図形を絵付に描いた彩文土器。
  • 本作が所属するハラフ文化は、シリア-トルコ国境近くのハーブール川沿いに位置するテル・ハラフ(Tel Halaf)で発掘された彩文土器を標式とする、北部メソポタミアの先史時代の文化です。

まだでしたら、解説動画もぜひご覧ください👇

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